wan0ri Lab

AWSリソースのコスト計算: 是正前後でどこを見るか

TL;DR

  • AWS の是正対応では、「直せるか」だけでなく「直した結果いくら増えるか」を事前に見積もる必要があります。
  • コスト計算は、サービス名ごとではなく 時間課金 / 容量課金 / リクエスト課金 / データ処理課金 に分解すると整理しやすいです。
  • 2026-08-11 時点で、東京リージョンの最終見積もりは AWS Pricing Calculator と各料金ページで確認するのが前提ですが、KMS・Config・CloudTrail・NAT Gateway・Network Firewall のように“是正で増えやすい”箇所は先に押さえておくと差分を説明しやすいです。

はじめに

既存 AWS 環境の是正対応では、設定変更そのものより、

  • 変更前後でいくら増減するか
  • 継続課金か、一時的な課金か
  • 新たに作るリソースに待機コストがあるか

を先に整理することが多いです。

特にセキュリティ是正では、

  • KMS を使う
  • AWS Config の記録やルール評価を増やす
  • CloudTrail の配信先や出力先を増やす
  • GuardDutySecurity Hub CSPM を有効化する
  • NAT GatewayNetwork Firewall を追加する

といった変更が入りやすく、意外とコストの説明が必要になります。

この記事では、東京リージョン (ap-northeast-1) を前提に、是正前後のコスト計算でどこを見るべきか を整理します。


まず考え方: コストは4つに分ける

個別サービスの料金を丸暗記するより、まず課金軸を分けた方が分かりやすいです。

私はだいたい以下の4つで見ます。

  1. 時間課金
    • 例: EC2, NAT Gateway, Network Firewall endpoint
  2. 容量課金
    • 例: EBS, S3, CloudTrail Lake, KMS key
  3. リクエスト / 評価課金
    • 例: KMS API, AWS Config rule evaluations, S3 requests, Cost Explorer API
  4. データ処理 / データ転送料金
    • 例: NAT Gateway, Network Firewall, GuardDuty, CloudTrail to CloudWatch Logs

この分け方をしておくと、「この是正で何が増えるのか」がかなり見やすくなります。


まず見るべき共通ポイント

1. 常時起動かどうか

NAT GatewayNetwork Firewall のように、作っただけで時間課金が始まるもの があります。

一方で、IAM のようにサービス自体に追加料金がないものもあります。
AWS 公式ドキュメントでも、IAM は追加料金なしで使えると明記されています。

2. 作成時だけでなく“使い続ける限り”課金されるか

たとえば EBSS3 は、作成時ではなく 保持している間ずっと 課金されます。
KMS もカスタマーマネージドキーは月額課金です。

3. 監査や検知系は“イベント量”や“評価回数”で増える

AWS ConfigGuardDutySecurity Hub CSPM は、単に ON/OFF だけでなく、対象リソース数や評価量でコストが増えます。


よく増えやすいサービスと見方

1. EC2

EC2 は基本的に インスタンスタイプ × 稼働時間 で考えます。

見るポイントは以下です。

  • インスタンスタイプを変えるか
  • 台数が増えるか
  • 常時稼働か、停止可能か
  • 追加で EBSElastic IP、データ転送が増えないか

是正対応でありがちなのは、踏み台や検証用インスタンスを一時的に追加し、そのまま残ってしまうケースです。


2. EBS

EBS容量 (GB/月) が基本で、gp3 などでは追加 IOPS やスループットも課金対象です。

たとえば是正対応でよくあるのは以下です。

  • 暗号化済みボリュームへの置き換え
  • スナップショット取得
  • 一時的なコピー用ボリュームの作成

このときの見方は、

  • ボリュームサイズは何 GB か
  • 何日保持するか
  • スナップショットも残るか

です。


3. S3

S3保存容量 + リクエスト + 取り出し + データ転送 の組み合わせです。

是正対応で増えやすいのは、

  • ログ保管バケット
  • バージョニング有効化
  • 監査ログの長期保存
  • ライフサイクル未整備による容量増

です。

そのため、S3 のコスト見積もりでは最低限、

  • ストレージクラス
  • 月間保存量
  • バージョニングの有無
  • PUT / GET / LIST が多いか

を見ておくと整理しやすいです。


4. KMS

KMS は是正対応でかなり出やすいです。
2026-08-11 時点の AWS 公式料金ページでは、カスタマーマネージド KMS キーは 1 キーあたり月額 1 USD、API リクエストは 月間 20,000 リクエストの無料枠 を超えると課金されます。

見るポイントは以下です。

  • キーを何本新規作成するか
  • ローテーションをどうするか
  • どのサービスからどれだけ API が呼ばれるか

特に、

  • S3 SSE-KMS
  • EBS 暗号化
  • SNS / SQS 暗号化
  • Lambda 環境変数暗号化

を広く使うと、KMS キー数とリクエスト数が増えます。


5. AWS Config

AWS Config は、設定項目数、Config ルール評価数、Conformance Pack 評価数 で課金されます。

セキュリティ是正で Security Hub CSPM を有効活用すると、Config の重要度がかなり上がります。

見るポイントは以下です。

  • 記録対象リソース数
  • 継続記録か、定期記録か
  • ルール数
  • 評価頻度

公式ページでも、追加料金として S3SNS、カスタムルールの Lambda 料金が別途かかると明記されています。


6. CloudTrail

CloudTrail は、実は「全部が高い」わけではありません。

AWS 公式料金ページでは、

  • Event history の直近 90 日表示は追加料金なし
  • 進行中の管理イベントを S3 に配信する最初の 1 つの trail コピーは無料

とされています。

一方で、コストが増えやすいのは以下です。

  • CloudWatch Logs への配信
  • CloudTrail Insights
  • CloudTrail Lake
  • データイベントの扱い

たとえば CloudWatch Logs への配信は、2026-08-11 時点の料金ページでは 1 GB あたり 0.25 USD とされています。


7. Security Hub CSPM

Security Hub CSPM は、2026-08-11 時点の AWS 公式ページでは、

  • security checks 数
  • finding ingestion events 数
  • automation rule evaluations 数

の3軸で課金されると説明されています。

つまり、単に「有効化したら固定額」ではなく、

  • 対象リソース数
  • Findings の量
  • 自動化ルールの回り方

によって変わります。

このため、Security Hub 導入・拡張時は

  • 対象アカウント数
  • 対象リージョン数
  • 有効化する標準やコントロール

まで見積もりに含めた方が安全です。


8. GuardDuty

GuardDuty は、AWS 公式料金ページでは 分析するログ、イベント、ワークロード、データ量 に応じた従量課金です。

見るポイントは以下です。

  • どの protection plan を有効化するか
  • EKS 監査ログやランタイム監視を使うか
  • S3, EBS, Lambda などどこまで対象にするか

「とりあえず全部有効化する」と、監視対象の広がりに応じて予想より費用が増えやすいので、段階導入の方が説明しやすいです。


9. NAT Gateway

NAT Gateway は、是正対応後に通信経路を整理するときに増えやすいです。

AWS 公式の VPC 料金ページでは、NAT Gateway

  • 時間課金
  • 処理データ量課金

の両方がかかると説明されています。

そのため、

  • 1 AZ に 1 台置くのか
  • 複数 AZ で冗長化するのか
  • VPC Endpoint で代替できる通信があるか

はコスト差が出やすいです。


10. AWS Network Firewall

AWS Network Firewall も待機コストが重くなりやすいサービスです。

AWS 公式料金ページでは、

  • 各ファイアウォールエンドポイントの時間課金
  • 処理トラフィック量の GB 課金

が発生すると説明されています。

特に、AZ ごとにエンドポイントが必要になる構成では、単純に 1 台分では済みません。


東京リージョンでの見積もりで気を付けること

ここはかなり重要です。

AWS の料金はサービスによってリージョン差があります。
そのため、東京リージョン (ap-northeast-1) の見積もりは、最終的にそのリージョンの料金で確認する必要があります。

私なら以下の順で確認します。

  1. 各サービスの公式料金ページで課金軸を確認
  2. AWS Pricing Calculator で東京リージョンを指定して概算
  3. 既存利用分は Cost Explorer で実績確認

AWS Pricing Calculator のワークロード見積りは追加料金なしで使えます。


逆に、作っても追加料金が発生しにくい / 追加料金なしのもの

是正対応では「何が高いか」と同じくらい、「何は気にしなくてよいか」も重要です。

2026-08-11 時点で、少なくとも公式情報から追加料金なしと確認しやすいものは以下です。

  • IAM
    • 追加料金なし
  • CloudTrail Event history
    • 直近 90 日の閲覧は追加料金なし
  • CloudTrail の進行中管理イベントを S3 に配信する最初の 1 コピー
    • 無料
  • AWS Pricing Calculator の workload estimate
    • 追加料金なし

一方で、「サービス自体は無料に見えても、裏で使う S3 / CloudWatch Logs / Lambda / Config が課金される」ことはかなり多いです。


ざっくりした見積もりテンプレート

是正前後比較では、以下の形にすると説明しやすいです。

1. 追加するリソース
   - 例: KMS key 2本、Config rule 10本、NAT Gateway 1台

2. 継続費
   - 月額固定に近いもの
   - 容量に応じて毎月増えるもの

3. 変動費
   - APIリクエスト
   - 評価回数
   - データ処理量

4. 一時費用に近いもの
   - 一時的なスナップショット
   - 検証用インスタンス

これで、

  • 毎月どれくらい増えるのか
  • 利用量次第でぶれるのはどこか

を分けて説明できます。


まとめ

AWS リソースの是正対応では、単に「修正できるか」だけではなく、修正後にいくら増えるか までセットで見る必要があります。

特に、セキュリティ是正で増えやすいのは以下でした。

  • KMS
  • AWS Config
  • CloudTrail
  • Security Hub CSPM
  • GuardDuty
  • NAT Gateway
  • Network Firewall

一方で、IAM のように追加料金なしで使えるものや、CloudTrail Event history のように無料で見られる範囲もあります。

東京リージョンでの最終見積もりは、必ず AWS Pricing Calculator と各サービスの料金ページで確認しつつ、まずは

  • 時間課金
  • 容量課金
  • リクエスト課金
  • データ処理課金

の4軸で分解すると、かなり整理しやすいです。

今後は、今回触れたうち

  • KMS
  • AWS Config
  • Security Hub CSPM
  • GuardDuty

あたりの見積もり観点も、もう少し具体的に深掘りしていきたいと思います。